2月28日、びわ湖毎日マラソンで鈴木健吾(富士通)が2時間4分56秒の日本新記録で優勝した。スポーツライターの酒井政人さんは「中学・高校はさほど目立つ存在ではなかったが、箱根駅伝で活躍した神奈川大学時代から五輪を目指すなど意識が高かった。レース後半に強く、暑さにも強く、スパート力もある。ナイキ厚底シューズの存在もあり、一躍、3年後のパリ五輪の金メダル候補といっていい」という——。
2時間4分56秒の日本新記録で優勝し、笑顔を見せる鈴木健吾(富士通)
写真=時事通信フォト
2時間4分56秒の日本新記録で優勝し、笑顔を見せる鈴木健吾(富士通)=2021年2月28日、滋賀・皇子山陸上競技場

誰も予想しなかった「マラソン日本新」なぜ出たのか

「まさか(2時間)4分台が出るとは……」

2月28日に行われたびわ湖毎日マラソン。鈴木健吾(富士通)の爆走に度肝を抜かれたファンは少なくないだろう。大迫傑(Nike)が保持していた日本記録を33秒も塗り替える2時間4分56秒というタイムも衝撃だった。

日本陸連の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーが、「まさか4分台が出るとは夢にも思っていませんでした」と口にするほどで、鈴木本人も「こんなタイムが出るとは思わなかったので、正直自分が一番ビックリしています」と本音を漏らしている。

筆者も本当に驚かされた。本人には失礼だが、まさかの快走だった。

鈴木の何がすごかったか。とにかく終盤の走りが強烈だった。35km通過時は2020年3月の東京マラソンで日本記録を樹立したときの大迫より25秒遅れており、首位を走ってはいるもののタイムは2時間5分台だろうか、という状況だった。それが40km通過時では大迫の記録を11秒上回り、日本記録が濃厚になる。競技場に帰ってきた鈴木は腕時計を確認。最後は2時間4分台を目指して、残りの力を振り絞った。

過去4回のマラソン経験があった25歳は、大会前の自己ベストが2時間10分21秒。今回一気に5分半近くも自己ベストを更新したことになる。