東京大学で東洋史学の博士号を取得した歴史学者
韓国大統領府は11月23日、次の駐日大使に姜昌一(カン・チャンイル)氏(68)を内定した、と発表した。昨年5月に駐日大使となった南官杓(ナム・グァンピョ)大使は1年半での退任となる。
姜氏は韓日議員連盟の前会長で、現在は名誉会長を務めている。東京大学で東洋史学を専攻して博士号を取得した歴史学者で、日本史にも詳しい。革新系与党の「共に民主党」に所属し、2020年5月まで国会議員を4期務めた。議連の活動などを通じ日本の政界にも人脈があり、頻繁に来日しては安倍晋三前首相らと会談を重ねていた。
旧朝鮮半島出身労働者の元徴用工の訴訟問題が2年以上も解決されず、日韓関係はかなり冷え込んでいる。
姜氏の起用について大統領府の報道官は記者会見で「経験と専門性、長年のネットワークによって冷え込んだ韓日関係を改善できる人物だ。9月の菅義偉内閣の発足を受けて起用を内定した。姜氏の力で未来志向的な日韓関係へと進めるよう期待したい」と語った。
報道官のこの説明から分かるように姜氏の起用には、韓日関係を改善しようという文在寅(ムン・ジェイン)大統領の思惑が色濃く反映されている。
国後島を訪れ「北方領土はロシア領土だ」と発言
韓国大統領府の発表から8日後の12月1日、驚いたことに姜氏が突然、ソウル市内で日本のメディアを集め、北方領土や天皇をめぐる自身の過去の発言について釈明の記者会見を開いた。
まず北方領土発言について姜氏は「旧ソ連に奪われ、占有されたという意味で述べたが、その趣旨がうまく伝わらなかったようだ」と釈明した。姜氏は2011年5月、野党議員の1人として北方領土のひとつである国後島を訪れ、「北方領土はロシア領土だ」と韓国メディアなどに話していた。
2019年2月に文喜相(ムン・ヒサン)国会議長(当時)が、慰安婦問題にからんで天皇陛下に謝罪を求めたときには、姜氏は「文議長の発言は極めて常識的だ。天皇に元慰安婦を慰問してほしいという意味だろう」と文議長を擁護していたが、今回の釈明記者会見では「文議長の考えを説明しただけだ。日本の天皇の存在と役割についてまったく無知な発言だった」と語った。
河野太郎外相(当時)が「文議長の発言は無礼だ」と述べたことに対しても、「(河野外相の方が)逆に非常に無礼な発言をした」と批判していた。