“同情を嫌った”巨人・阪神両球団でエースとして活躍した小林繁さんが急性心不全で急逝。享年57歳だった。“健康そのもの”と思われていた小林さんの突然死とあって、誰もが耳を疑った。
突然死に結びついた「急性心不全」。あたかも病名のように使われているが、実は病名ではない。心不全とは心臓の機能が低下し、本来の心臓の働きである全身への血液供給が十分にできなくなるために生じる症状と、衰弱した状態を意味するものである。
その心不全を生み出すのは、心筋梗塞、心臓弁膜症、心筋症などすべての心臓疾患。ほかにも、高血圧、糖尿病など心臓疾患以外の病気が原因のこともある。
ただ、死因に急性心不全とある場合、専門医たちは異口同音に「まず心筋梗塞でしょう」と――。
事実、小林さんは午前8時頃に「背中が痛い」と訴えたという。背中が痛いのと心筋梗塞とは一見関係ないように思えるが、実は心筋梗塞の代表的症状のひとつである。専門医が教えてくれた代表的症状は、「胸を焼け火ばしでえぐられるような痛み」「胸を締めつけられるような痛み」「左肩が凝る」「左の奥歯がしみるように痛い」「のどの下あたりにドーンといったような痛み」「胃が痛い」、そして、「経験のない背中の痛み」など。もちろん、痛みなどの症状がなく心筋梗塞で倒れるケースもある。
そして、小林さんは午前10時30分頃に意識を失ったが、心筋梗塞をもっとも多く発症するのは午前6時から11時という研究報告がある。
突然死に結びつく心筋梗塞は心臓の冠状動脈が詰まってしまい、その先に血液がいかず、心筋が壊死するものである。
その前段階として狭心症がある。心筋の欲しがる血液量を冠状動脈が供給できない状態を狭心症という。冠状動脈が動脈硬化で細くなるケースが多いが、それ以外に「血管攣れん縮しゅく性狭心症」がある。血管が細かく痙攣を起こし、血液の流れが悪い状態になる。日本人には血管攣縮性狭心症が多いといわれている。これは夜中から明け方、さらに午前中に多く起こる。この場合、ストレスや喫煙がより強い引き金になるといわれている。
このような突然死に結びつく狭心症、心筋梗塞は、会社などで行う定期健診では発見されにくい。もちろん、かなり進行したものは別である。突然死をしっかり予防するためにも、40歳を超えたら、1年に1回、それが無理なら、せめて3年に1回でも人間ドックを受けるようにすべきである。
【生活習慣のワンポイント】
狭心症・心筋梗塞の予防8ポイント。(1)高血圧、(2)高脂血症、(3)喫煙、(4)糖尿病、(5)肥満、(6)運動、(7)ストレス、(8)睡眠である。これを上手にコントロールするのである。
高血圧には発見しにくい仮面高血圧があるのでそれを注意し、高脂血症のある人はバランスの良い食生活。喫煙者は禁煙に向けて努力し、自分だけではうまくいかないときは「禁煙外来」を受診。
糖尿病は医師、栄養士などの指導で上手に血糖をコントロールし、肥満は無理のないダイエットを。歩くことも少なくなった現代人の健康維持・改善のために、1回30分のウオーキングを1日2回。
そして、“健康そのもの”と思われている人に特に行ってほしいのがストレス解消と十分な睡眠である。
ストレス解消のもっとも簡単な方法は十分な睡眠。スッキリ目覚めるために、夜12時までには布団に入るシンデレラ睡眠を!――その前に、「ぬるめのお風呂にゆっくり入る」「夕方以降はカフェインを控える」「カルシウムとビタミンB 12の十分な摂取」を行っておくと、スムーズに入眠できるだろう。