昔から“頭痛持ち”という言葉があるように、日本には頭痛で悩んでいる人は多い。その頭痛は慢性頭痛と呼ばれていたもので、2005年からは「一次性頭痛」と名称を改めた。その頭痛に悩まされている人は15歳以上で約4000万人もいる。

一次性頭痛があれば、もちろん「二次性頭痛」もある。これは生命に関わるような病気などが原因となって起きている。それには「くも膜下出血」「脳腫瘍」「急性緑内障」「硬膜動静脈瘻」「脳脊髄液減少症」「副鼻腔炎」など数多くあり、すぐに専門医の診察を受けるべきだろう。

一方、一次性頭痛の代表は「緊張型頭痛」「片頭痛」「群発頭痛」。この中の片頭痛と群発頭痛の治療が一部変わりつつある。より強い痛みに悩まされている2つの頭痛患者の場合である。

07年、スウェーデンで開催された国際頭痛学会で、大きな注目を集める発表があった。東京女子医科大学頭痛外来の清水俊彦講師のグループが行った「アロディニア(異痛症)を伴う片頭痛には帯状疱疹ウイルスが関係している」という新説である。

アロディニアは片頭痛発作のごく初期に生じることのある頭皮や顔面の感覚の障害。日本人の片頭痛患者では60~80%に発現するという。

清水講師は診察の中で片頭痛患者が帯状疱疹を発症し、それが治まった後に、片頭痛発作初期に出るアロディニアの症状が強く出てくる症例を多く経験しており、帯状疱疹ウイルスの関わりを疑わなかった。

そこで、清水講師は自身の受け持つ片頭痛患者116人を対象にアロディニアと帯状疱疹ウイルスとの関係を検討。結果、体内で帯状疱疹ウイルスが再び活動していると確認された患者グループは、帯状疱疹ウイルスが活動していないグループに比べ、アロディニアの出現率が4.3倍も高かったのである。それとともに、頭痛発作の頻度と重症度も高くなる。

さらに、群発頭痛と帯状疱疹ウイルスの関係にも研究が進み、帯状疱疹ウイルスが再活性化して三叉神経を過敏な状態にして、群発期の激烈な頭痛の発現に結びついていることもわかってきた。

そこで、清水講師の片頭痛、群発頭痛への治療は変化をみた。

頭痛の診察は、「問診」「血圧測定」「触診」と続き、次に一次性頭痛、二次性頭痛を鑑別するために「頭部、顔面の触診」に続いて頭部の画像検査「CT(コンピュータ断層撮影)」「MRI(磁気共鳴断層撮影)」「MRA(磁気共鳴血管撮影)」などを行う。これで片頭痛や群発頭痛と診断がつくと、「血液検査」が必須となる。帯状疱疹ウイルスの活動の有無の確認である。帯状疱疹ウイルスの再活性化が明らかになると、抗ウイルス薬「バルトレックス」が使われる。

ただし、神経がウイルスで損傷されても適切な治療で修復できる1週間以内の“ゴールデンアワー”であれば、それを逃さず最初の診察時に帯状疱疹ウイルスの関与の可能性の有無を判断でき、関与ありならばその時点でバルトレックスを使用する。ゴールデンアワーを逃さないために、患者にも早期受診が望まれる。

【生活習慣のワンポイント】

片頭痛の予防では、以下の4点を実行しよう。

(1)三食規則正しく摂り、7~8時間睡眠。寝すぎは禁物。
 (2)発作を減らすマグネシウム、ビタミンB2を多く含む食品を摂る。基本は栄養バランスのいい食事。
 (3)発作を起こしやすい赤ワイン、チーズ、チョコレート、ハムなどは摂りすぎない。
 (4)人混み、騒音、強い光、強烈なにおいなどは発作の誘発因子になるので、できる範囲で避ける。