サンフロンティア不動産の社員は毎朝30分間、社内外の掃除をする。それを終えてから20分間の朝礼に臨むのが決まりだ。朝礼の内容は次の5つのパートに分かれる。

・朝の挨拶:サンフロンティア不動産の経営哲学を唱和する。
・成果報告と連絡事項:前日に成約した物件の報告と連絡事項を伝える。
・今日のアイデア:業務の進行が円滑になるようなアイデアを社員が自主的に発表する。
・今日の言葉:テーマを決めて社員がスピーチ。ここに最も時間をかける。
・責任者からの言葉:「今日の言葉」を聞いた責任者が感想や意見をつけ加える。

社員たちを見ていると、掃除で汗を流したためか、さっぱりとした表情で朝礼に参加している。とても気分がよさそうだ。そしてスピーチを聞いていると、自分の言葉で喋っている。本からの引用や有名人の言葉でなく、仕事のなかで気づいたことを発表している。

「ジャケットはお客様の前で着るもの」という考えから、朝礼では全員シャツ姿。

「ジャケットはお客様の前で着るもの」という考えから、朝礼では全員シャツ姿。

 「毎朝掃除をしているうちに、いろいろなことに気づくようになった」

堀口(智顕)社長がそう言うように、スピーチでは「気づき」の重要性がテーマとなることが多い。

 「掃除も朝礼も1種の『潤い』だと思うのです。朝来て、デスクに座って、メールチェックして、営業に出かける。そうした効率優先の仕事のやり方よりも、日本人は情緒豊かな気持ちで、潤いを持って仕事をしたほうがいい結果が得られるんじゃないか。私はそう考えています。そういう感性を持った人たちと一緒に仕事をしたいのです」(堀口社長)

昭和30年代、人々は朝起きると家の前の道路を掃き、ゴミを拾っていた。掃除から1日が始まったのである。同社の社員たちを見ていると、昭和30年代の日本人を思い出す。今どき珍しい純情な人たちの会社だ。

(尾関裕士=撮影)