むつみ造園では毎月1回、午前6時から朝礼が行われる。その時間に合わせて、朝食を準備するのが女子社員だ。3人が1組となって温かいご飯を用意する。チーフの鳴海祐子さんに朝食の支度について聞いた。

めいめいが好きなものをとって食べる。人気は秋田名物の「桧山納豆」と筋子だった。

めいめいが好きなものをとって食べる。人気は秋田名物の「桧山納豆」と筋子だった。

「朝礼が終わるのが7時15分で、それから食事です。私たちがやるのは2升の米を研ぐのと、季節の具の入った味噌汁を作ること。意外と手間はかかりません。大事なのはガス釜で炊くのと、お櫃に入れて出すことです。社長は『米は火で炊くものだ、そして秋田杉のお櫃で水分を飛ばすんだ』と言うので、ガス釜とお櫃を買いました」

彼女たちは手早く準備をし、お櫃と副菜をテーブルに並べておく。その日の味噌汁はきのこ、キャベツ、人参の入った具だくさんのもので、副菜は地元ブランドの「桧山納豆」、筋子の醤油漬け、川魚の佃煮、漬物だった。どれもご飯にぴったりのものである。

幹部社員たちは朝礼を終えると、足早にお櫃の周りにやってくる。鳴海さんがお櫃の蓋を取るとふわーっと湯気があがった。社員たちはご飯茶碗に炊き立ての有機米をよそう。そうしてテーブルについてもりもりと食べるのだ。

「うちの母ちゃんのよりおいしい」

「みんなで一緒に食べるから食欲がわいて、ずいぶん太った」

誰に聞いてもおいしさをほめたたえる感想ばかり……。佐々木社長は言う。

「食べるのを見ていると、社員の体調や気分が手に取るようにわかります。調子が悪い人や悩みがある人は食が進みません。一方、お代わりする人は元気いっぱい。朝礼も朝食も社員とのコミュニケーションなのです」

私もみなさんと一緒に炊き立てのご飯を食べた。そして、結論が出た。むつみ造園の朝礼、朝食を通じて学んだ最大のことは、炊き立てのご飯を一層おいしく食べるためには、ガス釜と秋田杉のお櫃が要るということだ。

(泉谷玄作=撮影)