「朝礼の後、以前は買ってきたおにぎり、サンドイッチを出していました。でも社員たちが残すことが多くて……。それで、2006年の初めから炊きたてのご飯と味噌汁に変えたところ、みんなお代わりするようになった」

朝礼の前に、全員が敷地内にある宝蔵神社の前に整列し、柏手を打ってお参りをする。

朝礼の前に、全員が敷地内にある宝蔵神社の前に整列し、柏手を打ってお参りをする。

笑顔で話すのは、秋田市に本社を置くむつみ造園土木の佐々木吉和社長だ。むつみ造園は従業員82人、売り上げ23億円の規模で、造園会社としては全国でトップ10に入る。そして同社では毎月1回、幹部社員25人を集めて朝礼を行っている。午前6時に始まる朝礼に、誰ひとり遅れてくる者はいない。東北人らしく生真面目で責任感が強いから、寝坊などしないせいもある。しかし、炊き立てのご飯が出るようになってからは集合時間前に全員が顔を揃えるようになった。ご飯の持つ力は強いのだ。

幹部朝礼は次のような順序で進んでいく。集合後、宝蔵神社に参拝し、仕事の安全を祈願する。その後会議室で1時間の朝礼兼会議。業務報告、連絡が半分で、残りの時間は「これからの時代をとらえる」というテーマで社長もしくは幹部がスピーチを行う。ロングレンジで社業について考える時間をとっているのだ。それが終わると別棟の部屋へ移動して、全員で朝食となる。

 「ご飯は敷地内で育てた有機米で、味噌汁の味噌は近所の農家の手作りですから、みんなにこにこしてお腹いっぱい食べる。私は精神的な訓示は一切やらないことにしています。建前で訓示するのは社長の自己満足にすぎない。社員一1人ひとりと向き合えばコミュニケーションが密になる。朝食もそのひとつです」(佐々木社長)

朝礼を行うグリーンサムガーデンの敷地は1万2000坪もあり、花や樹木を植えて地域の人々に開放している。そうした地域への貢献が認められ、06年には内閣総理大臣賞を受けた。朝食付き朝礼に限らず、アイデアに溢れる会社なのだ。

(泉谷玄作=撮影)