ウィズ&ポストコロナの時代を、明るく生き抜く科学書

人生100年時代というが、多くの人はそこまで長生きできるかどうか自信がない。本書は老化研究の第一人者であるハーバード大学の遺伝学教授が、老化は決して避けて通れないものではないと喝破する。

デビッド・A・シンクレア、マシュー・D・ラプラント著 梶山あゆみ 訳『LIFESPAN ライフスパン 老いなき世界』(東洋経済新報社)
デビッド・A・シンクレア、マシュー・D・ラプラント著『LIFESPAN ライフスパン 老いなき世界』(東洋経済新報社)

「老化の情報理論」によってそのメカニズムを解明し、最先端の科学的知見から「120歳まで健康に生きられる方法」を開示する。「病のない老い、老いなき世界」はすぐそこまで来ているという現実を知り、2020年度で定年を迎える評者にも光が見えてきた。

本書は3部構成で、第1部「私たちは何を知っているのか(過去)」、第2部「私たちは何を学びつつあるのか(現在)」、第3部「私たちはどこへ行くのか(未来)」からなる。これはゴーギャンの名画タイトル(ボストン美術館所蔵)と同じ作りで、人類の過去・現在・未来にわたる身体を通じて「老いなき世界」を導いてゆく。

今や老化は治療可能な病であり、生命の「サバイバル回路」を働かせよと著者は説く。体の遺伝情報を司るDNAが損傷したときに修復する仕組みだが、老化を防ぐポイントがここにある。ちなみに、具体的な方策を解説する力量は、著者が非常に優れた医学者であることを示している。中身が本当によくわかっている専門家ほど、誰もが理解できるように説明できるからだ。