左派メディア有名人を斬りまくる、個人ブロガーの「悪書」

タイトルがずばり示すように、特定の業界や番組、コメンテーター個人を名指しで批判し、いわゆるネトウヨ的なスタンスから、安倍政権を支持する意思がたっぷりの一冊。どう割り引いて優しい目で読んでも、お品がよろしいとは言いがたい。

藤原かずえ『テレビ界「バカのクラスター」を一掃せよ コロナ禍はテレビ禍』(飛鳥新社)
藤原かずえ『テレビ界「バカのクラスター」を一掃せよ コロナ禍はテレビ禍』(飛鳥新社)

もともと著者は左派のメディア有名人をギッタギタに斬ることで知られる個人ブロガーということで、その文章も実に横書きのブログ的で英語の論理学や心理学用語が頻繁に交じり、勢いに乗って軽妙な罵倒の言葉も顔を出す書き方となっている。細部から察するに、もしかして(昨今なぜか保守界隈で流行の)女性名を借りた男性著者の思考や文章ではあるまいか、というのが私の勝手な邪推である。

だが煽られまいと頭を冷静に保ち、懐疑的視線たっぷりに身構えるも、あまりに面白くて一気に読み終えてしまったのは、それほどにこの「コロナ禍はテレビ禍」との著者の指摘は、的を射ているということかもしれない。

新型コロナウイルスの感染拡大で東京が緊急事態宣言下にあったころ、外部との接触を避け自宅から出られない人々が情報を求めた先は、多くが速報性の高いネットであり、テレビであった。ウェブメディアは軒並み過去最高アクセス数を更新、長年ネットで細々と記事を書く私にも驚くほどのアクセス数がボーナスのようにやってきたし、少しでもテレビに出してもらうと大量の親戚や同級生や近所の人に見つかった。あのころ、誰もがそれぞれに“画面を見つめっぱなし”だったのだ。