終電繰り上げは東京衰退の要因になりうる
東京の夜が早くなりそうだ。10月21日、JR東日本が来春に最大37分の終電繰り上げを実施すると発表。これに続くように、11月4日には小田急、11月9日には西武、
いっぽう国や東京都は、東京の夜を遅くしようとしていた。鉄道をはじめとする公共交通の営業時間を拡大して、深夜の経済活動(ナイトタイムエコノミー)を活性化するだけでなく、他国との時差に関係なくビジネスをしやすい環境を整えることで、東京の国際競争力を高めようとしていたのだ。
つまり鉄道会社が、国や東京都の意図に反して、東京の夜を早めようとしているのだ。この動きに反対する声は少ないので、このまま来春終電繰り上げが実現する可能性は高い。
鉄道会社の都合で終電を繰り上げ、東京の夜を早めて本当にいいのだろうか。筆者は、それは鉄道を支える現場の働き方改革につながる一方で、今後東京が衰退する要因になりうると考える。
なぜそう考えるのか。今回は、海外の都市における公共交通24時間化の事例や、東京の将来像にふれながら、その理由を説明しよう。
世界の大都市が24時間運行をする理由
まず海外の都市における公共交通の24時間化についてふれておこう。公共交通の24時間化は、日本では元旦などを除いて実現していないが、海外には実現している都市がある。たとえばニューヨークでは地下鉄とバスが通年で、ロンドンでは地下鉄が週末限定、バスが通年で終夜運行している。また、パリやベルリン、シンガポール、香港、ソウルなどでは、バスの終夜運行を実施している。
こうした終夜運行は、もともと労働者の輸送を目的として開始された。ニューヨークでは港湾地区で長時間働く労働者を運ぶため、1904年に地下鉄が開業したときから終夜運行を開始。ロンドンでは郵便局などで働く労働者を運ぶため、1913年からバスの終夜運行を開始した。
現在は、公共交通が24時間動いていることがナイトタイムエコノミーを活性化させ、都市の価値を高める要因になっている。たとえば他国との時差に関係なく昼夜問わず活動できることは、グローバルなビジネスをする上で有利だ。また、ニューヨークでミュージカルをはじめとするエンターテインメント産業が発達した背景には、24時間いつでも移動できる環境が少なからず関係している。
現在、ニューヨークやロンドンをはじめとする世界の複数の都市で公共交通が24時間化されているのは、そのメリットに気づいているからであろう。そうでなければ、わざわざコストと労働力を注ぎ込んで深夜に地下鉄やバスを動かす必要はない。