東京は「衰退」の可能性がある
となれば、東京でも公共交通の24時間化が検討されるのは当然であろう。東京は、日本最大の都市であるだけでなく、アジアを代表する国際都市であり、もともと夜に活動する人が多いからだ。
東京は今後衰退する可能性がある。東京都では、これまで増え続けた総人口は2025年(23区では2030年)から減少に転じ、2040年代には3人に1人が65歳以上の高齢者になると予測されている。また、国際都市としての地位を維持する上では、シンガポールや香港などの海外の都市とのきびしい競争にさらされており、今後追い抜かれる可能性がある。これでは東京の立ち位置の現状維持は難しい。
このような衰退を回避するには、東京の国際競争力や、都市としての価値を今よりも上げる必要がある。他国で実現している24時間活動できる環境を整え、アジアを代表するビジネスセンターとして機能させることができれば、人口が減っても東京は輝き続けることができる。
羽田空港が24時間化しても、バスの終夜運行は実現しなかった
ところが東京では、そのための第一歩である公共交通の24時間化が実現していない。厳密に言うと、2013年12月から社会実験として、東京都が六本木・渋谷間で都営バスの終夜運行を実施したものの、利用者数の低迷を理由に1年足らずで中止に至った。
また東京の鉄道では、今年期間限定で終電繰り下げを実施する予定があった。これは、東京2020大会の観戦者を輸送することを目的としたもので、コロナ禍による大会の延期によって本年中の実施が見送られた。
なお、大阪の地下鉄では今年2時間程度の終電繰り下げが実現したものの、1日限定で終わってしまった。1月24日に国土交通省が主導して、大阪メトロ御堂筋線で終電繰り下げを実施したものの、利用者数が少なかったため、2月21日に実施予定だった終電繰り下げは見送られた。
このように日本では、国や東京都が公共交通の終夜運行や終電繰り下げを試み、結果的に定着しなかったという過去がある。
いっぽうバスに限ると、深夜・早朝に東京都心から羽田空港や成田空港にアクセスするバスの運行本数が、近年少しずつ増えていた。ところが羽田空港の24時間化や発着枠の拡大が実現しても、そこにアクセスするバスの終夜運行は実現しなかった。