●鉄則3:ネガティブな情動の制御

F型コミュニケーションの達人といえる人にもインタビューをした。一流のホテルパーソンなど接客を職業にしている人たちである。接客業では仲良しコンテクストのなかで、F型コミを使うことが主な仕事である。

債権回収と警察のプロと、ホテルパーソンのそれぞれが、仲良しコンテクストで感じる情動の強さを一として、対立コンテクストでは何倍の強さを感じるかを調べたところ、債権回収・警察のプロは、接客プロに比べて、緊張や不安を感じる度合いの変化が少ないことがわかった。つまり債権回収・警察のプロはネガティブな情動を接客のプロに比べて強くコントロールできていると考えられる(*注4)。反対に接客プロは仲良しコンテクストでは、債権回収・警察のプロよりも楽しさを感じやすい傾向が見られる。

感じの悪い人は、彼らとは逆に、仲良しコンテクストではあまり楽しそうではないし、対立コンテクストではネガティブな情動のコントロールができない人であるといえそうである。

感じのよいビジネスパーソンとして成長するための第一歩は、まずコンテクストを正しく読み取ることだ。次に、対立コンテクストではネガティブな情動をコントロールしつつ、相手の立場を理解し、こちらの意図をわかりやすく伝え、幻想でもよいから共通目標をつくりだす対話スキルを習得する。最後の仕上げとして、仲良しコンテクストでは、ポジティブな情動を解放するすべを身につける。この成長プロセスを経ることで、あなたはビジネスの修羅場で対立した相手から「敵ながらあっぱれ。もう一度あいつに会いたい」と賞賛されるビジネスパーソンになれるだろう。

*注1:James J. Gross“Handbook of Emotion Regulation”p140
*注2:前掲書 p172
*注3:アセスメントはBartlettとIzardのDimensional Rating Scale(DRS)とthe Differential Emotions Scale(DES)を使用
*注4:サンプル数がまだ少なく、データの信頼性と妥当性は未検証である。しかしSeligmanたちが2001年に行った研究“Why lawyers are unhappy”などを考慮すると、弁護士など対立コンテクストのなかで仕事をする人たちは、ネガティブな情動に慣れていると推察できる

(ライヴ・アート=図版作成)
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