●鉄則2:考えを明確に表現する
C型コミのプロたちは口をそろえて、「相手が何を考えているのかわからないとき、相手に不快感を持つ」という。
対立コンテクストのなかで、プロたちも「次に起こることへの不安」を強く感じている。そのような心理状態にあるとき、相手が何を考えているのかがわからないと、不安を超えて、不気味さまで感じてしまうだろう。まして交渉の最終段階になって隠されていた意図があらわになったとき、「だまされた!」という思いしか残らず、交渉のプロでも、「あんな奴の顔を二度と見たくない」という思いにとらわれる。
取調室で、被疑者と初めて対面するとき、刑事はまず、自分はどこに住んでいて、どんな趣味を持っているかなど、自分がどんな人間かを示すと、被疑者は口を開きやすくなるという。債権取り立てのトップ弁護士は、債務者またはその代理の弁護士と、共通の目標とマイルストーンを設定し、粘り強く交渉するうちに、双方でなんとなく社会的に意義あることをしているという協働意識が芽生えてくるという。
対立コンテクストでは、ウィン-ウィンの結果で終わることはない。借金の取り立てに成功すれば債権者の勝利であり、債務者はその交渉に関していえば敗北である。したがって共通の目標とは幻想とよぶべきものだが、それでも共通の目標設定をしていくのがC型コミュニケーションの極意である。意図を隠してしまうと共通の目標を設定することができない。感じが悪い人は、自分の意図を隠し、共通の目標設定をする努力をしない人であるといってもよいだろう。