オタク文化はそんなに受け入れられてない

韓国人にとってはもはや「踏み台」「残念賞」扱いの日本、選ばなければ大学に入れてしまう日本、よく考えれば誰でも大学に入れて学位を取得、卒業できてしまう国というのもすごい。そんな日本に、それまでの留学生とは違う、ある意味で「普通」のやんちゃな若者までが学歴と仕事、そしてキャリアを求めて日本にやってくる。他国の留学生は日本に興味があったり好きだったりだが、韓国人留学生の場合そうとは限らない現実。仕方なく来るという韓国人留学生とどう共生して行けばいいのか。私は最後に韓国人にも日本のアニメが好きなオタクがいるから、そういう人は親日で日本に来ているのではと尋ねた。

「大きな勘違いです。韓国でオタクは最底辺ですし、そもそも少ない。ジブリとかポケモンは韓国でも有名です。eスポーツが強いのも国家戦略です。そういうのは韓国ではオタクじゃない。日本独特の萌えアニメとか、そういうのが好きなのは特殊でパオフと呼ばれます。韓国では居場所のない連中です。それに連中も日本が好きと日本のアニメキャラが好きなのは別ですから。日本人はそういう人を見つけて喜ぶことが好きですね、テレビもそんなのばかり」

パオフとはスラングで日本なら「キモオタ」だろうか。確かに、日本の文化が好きで日本に来る外国人を扱った番組が人気だったりする。そこではたまに日本の深夜アニメや萌えキャラが好きな外国人が登場するが、それは韓国に限らず特殊も特殊な人である。別にそういう外国人を大切にすることは悪いことではないが、まるで日本のオタク文化が受け入れられていると考えるのは短絡に過ぎるし、日本でも大多数に受け入れられているかと言えば否だろう。私としては、昔に比べれば市民権を得たほうだとは思っているが。

「学ぶところは少ないけど、仕事はあるのが日本です。政治的な話は別にして私も日本で働いています。大人ですから。アメリカ留学の資金を貯めるまでの辛抱です」

日本はもはや「踏み台」「残念賞」にすぎない

ユンさんとはその後、互いに仕事上の愚痴とコロナの話題をひとしきりして別れた。ユンさんもまたごく普通の青年、真面目で努力家、趣味より勉強と自己啓発といった少し前の韓国人留学生のイメージそのままであった。「こちらも遠慮なく聞くし書くけどいいですか?」と断りを入れたが「そのほうがスッキリします」とのことだった。コロナ禍で鬱積したものもあるのだろう。

ユンさんは、日本は街中にハングルが溢れていて便利であること、日本人は親切で余計な波風は立てないこと、他国に比べれば韓国人にとって暮らしやすいことは認めていた。ユンさんに反日という印象はない、ただ日本を侮る意味での「侮日」ではあった。日本は踏み台にすぎなかった。

もう韓国人留学生を他の途上国の留学生と同じ扱いにすることは失礼なのかもしれない。とするなら、これからは当たり前の毅然きぜんとした対応と、言うべきことは言う姿勢が日本人に求められるのではないか。言い方は悪いが韓国の「下位層」までが就職難を背景に留学して来る現状で、「めざせ留学生30万人」という数値目標だけで満足している段階は終えている。対等な関係とは迎える側がへりくだることではない。日本に住む外国人というだけで弱者扱いする一部リベラルの姿勢こそむしろ差別的だ。外国人には優しく氷河期世代は自己責任、前者の若さのみが優先されている実態も、要らぬヘイトを生む要因となっている。