政府と闘い続ける風刺漫画家の勝利の笑顔

「私にどうやって中立になれと? 私のペンにだって“スタンド”があるのに!」。風刺漫画家、ズナール(本名ズルキフリー・アンワル・ウルハケ)の言葉に耳を傾けていたジャーナリストたちは一斉に噴き出した。スタンドにはペンたてという意味と政治的スタンスという意味がある。

自著『Fight Through Cartoons(漫画と共に闘う)』を手にする笑顔のズナール(2019年5月、筆者撮影)。
自著『Fight Through Cartoons(漫画と共に闘う)』を手にする笑顔のズナール(2019年5月、筆者撮影)。

「私だって怖い。人間だから。でも(風刺漫画家としての)責任と恐怖、どちらが重要か。責任だろう」

この彼の言葉を聴いたのは2018年、ソウルで開かれたアジア調査報道大会だった。イベントではミャンマーで拘束されていたロイター通信のジャーナリスト2名の解放を世界中から集まったジャーナリストたちが求めた。

15年当時のマレーシアのナジブ政権下でも、政権に批判的なジャーナリストらは次々と逮捕されていた。そんな中、風刺漫画家のズナールもマレーシアで9件の扇動罪で起訴された。有罪になれば最長で43年の懲役が言い渡される、そんな経験をしたズナールの口から「恐怖と責任」の言葉を聴き、一人一人の市民としての責任は何だろうとハッとさせられた。