クラスター発生さなかの歌舞伎町へ
「こんばんは」
新宿歌舞伎町、6月初めの週末。西武新宿駅のガード沿い、新宿プリンスホテルの入り口に向かって歩いていると男性2人に声をかけられた。20代の頃はこうして歌舞伎町で声をかけられることがよくあったが、最近は少ない。ごくたまに新宿区役所裏あたりで客引きに声をかけられるが、それも昔ほどしつこくない。私は歌舞伎町のサウナを定宿にしていた時期もあったし、新宿に事務所を構えていたこともある。もうこの街とは30年の付き合いだ。
「ちょっと話いい?」
男2人に威圧感はないが、客引きや勧誘でないことは肌感でわかる。ましてこんな外れで声などかけられたことはない。かけられるということは、ヤバい。かつて20歳の時、いまはなき風俗新聞社にいたこともある私は、川崎堀之内の担当だった。あの時、取材広告の未収金のいざこざの末、声をかけられ事務所に連れて行かれたのも堀之内の外だった。このような方々に、そのような場所の外で声掛けされるというのは逆にヤバいのだ。私は立ち止まった。
「どちら行かれるんですか」