新型コロナウイルスの影響で生活苦に陥る人が増えている。このうち特に苦しいのがキャバクラなどのナイトビジネスで働いていた女性たちだ。ライターの富士弥勒氏は、「キャバ嬢が風俗店の面接に訪れる動きが目立っている。貯蓄のない女性たちが追い詰められつつある」という——。
飲食店などが並ぶ東京・歌舞伎町。政府は25日、新型コロナウイルス感染症対策本部を首相官邸で開き、東京、神奈川、埼玉、千葉、北海道の5都道県で続いていた緊急事態宣言について、月末の期限を待たず解除した。=2020年5月25日、東京都新宿区
写真=時事通信フォト
飲食店などが並ぶ東京・歌舞伎町。政府は25日、新型コロナウイルス感染症対策本部を首相官邸で開き、東京、神奈川、埼玉、千葉、北海道の5都道県で続いていた緊急事態宣言について、月末の期限を待たず解除した。=2020年5月25日、東京都新宿区

日給が途絶えると追いつめられるのはあっという間

緊急事態宣言に伴う「休業要請」によって、都市部のキャバクラや風俗店の多くが経営危機に直面しているのはご存じのとおりだ。

しかし、この状況が風俗業界、さらには売春市場に少なからぬ影響を与え始めていることはあまり認知されていないのでは?

いったい、どういうことなのか。順を追って説明していこう。

営業自粛により軒並み窮地に立たされているキャバクラだが、キャバ嬢個人に目を向けると、必ずしも全員がピンチに陥っているわけではない。

昼職、すなわち会社員などの一般的な仕事と掛け持ちをしているキャバ嬢は、経済的にも精神的にも比較的に余裕があるからだ。営業自粛を機に、昼職への転職を成功させたキャバ嬢も同様である。

一方、悲惨なのはキャバクラ1本で生活し、かつ、これまで貯金を怠ってきた人たちだ。

基本的に、「夜の仕事」では、給料の日払いが認められている店舗が多く、毎日現金が入ってくるという特徴がある。「働いたその日にお金が入ってくる」というシステムは魅力的だが、自分を律することができない人にとってはその日暮らしの生活に陥りやすい。

このパターンは日給がもらえなくなった途端に家賃やクレジットカードの請求などの支払いが滞り、経済的にあっけなく追い詰められてしまう。

さて、こうなると残された選択肢は多くはない。

マンションを引き払って実家に戻るか、太客(金払いのいい常連客)の愛人になるか、それとも風俗嬢へ転身するか。