英国を舞台にした「競馬シリーズ」の1冊。登場人物は一筋縄ではいかない皮肉屋であることが多く、表面的な言葉は内心の声と必ずしも一致しない。来客を帰したいときに「ぶぶ漬け(お茶漬け)でも……」と誘う京都人のような感覚だろうか。同じアングロサクソン系でもストレートな米国人とは肌合いが違う。欧州や米国駐在時に英国人と触れ合う機会が多かったが、なるほどそのとおりだと感心させられた。
競馬用語も頻出するので原書で読むのは難しい。しかし新作が待ちきれなくて海外の空港でペーパーバックを買うこともあった。謎解きやサスペンスの要素も大いに気に入っているが、英国人気質を学ぶという意味でも最適のシリーズである。