『偽りの民主主義』 浜野保樹著 角川書店

戦後の動乱期には、さしたる肩書もないアメリカの駐留軍の兵士が、わが物顔で日本の文化に歪んだ干渉をし、歌舞伎や文楽を禁止したり、映画の内容にも乱暴な検閲を実施、厳しい統制下においた時代があった。

時代劇というだけで封建的だと製作の許可が下りなかった時代、永田雅一をはじめとする日本の映画人と進駐軍の利害のからむやりとりが克明に明かされている。膨大な資料を駆使し、今までになかった戦後史に35年以上取り組んだという著者の執念が感じられて興味深い。

自国文化に自信が持てず、海外の人の評価によってようやく価値を認めるという日本人の傾向が、最もあらわになったのが敗戦後の混乱期なのだろう。