開けるだけでたちまち旅行気分に
みなさん、缶にちは! 缶詰博士の黒川勇人です。
僕は幼時から缶詰大好き人間で、人生の半分以上を缶詰とともに過ごしてきました。缶詰の何がそんなにいいかと申せば、まず、そのまま食べられるという圧倒的手軽さ。そして、手軽なのに世界中の料理が詰まっているということ。
それがすごい!
日本は、世界でも珍しいほど缶詰文化が深くて、各地に「ご当地缶詰」が存在している。今回は、それらの中から絶品といえる5缶と、オマケで海外の缶詰1缶を紹介申し上げたい。まだまだ自由に旅をするのが難しい中でも、全部お取り寄せ可能だから、開けるだけで旅行気分が味わえますぞ!
北九州小倉の「角打ち」文化に浸る旅
宇佐美商店/百年床のぬか炊き缶詰
北九州市小倉といえば、酒屋の一角で酒が飲める「角打ち」文化が残る土地だ。そしてマンガ好きにとっては松本零士氏ゆかりの地でもある。JR小倉駅新幹線口には鉄郎とメーテル、キャプテン・ハーロックの銅像があるんですぞ!(興味のない人はスルーしてください)
その小倉駅から南に向かって歩くこと7分。掘り割りのような神獄川沿いに、活気溢れる商店街が広がる。大正時代からあるという「旦過(たんが)市場」であります。鮮魚に鯨、総菜とさまざまな店が連なっていて、店の奥をのぞけば裏手に神獄川の水面が見える。水運が盛んだった頃は、船で荷を運んできて店の裏手で引き上げていたそうな。
歴史を肌で感じられるこの市場で、三代にわたってぬか床を守ってきたのが「宇佐美商店」。小倉には青魚をぬかで煮る郷土料理「ぬか炊き」があり、同店は2019年にさばのぬか炊きを缶詰化(!)。以来メディアで取り上げられ、話題になっているのだ。
さっそく3缶セットを取り寄せて、スタンダードな味付けの「本味」を開けてみた。
匂いも見た目もさば味噌煮にそっくりで、缶汁を舐めてみると甘辛く、ほんのり苦みがある。その味が中まで沁みたさばは、背身も腹身も柔らかくジューシー。脂の乗りまくったノルウェーさばを使っているのだ。
ひと口頬張れば、目に浮かぶのはあの旦過市場──。そして、白ごはんがぐんぐん進んでしまうという、誠にいけないさば缶であります。