グルメ王国・宮城の鯨大和煮缶の「頂点」に君臨する逸品
木の屋石巻水産/長須鯨須の子大和煮
宮城グルメといえば牛たんに笹かま、萩の月。ほかにもふかひれ、牡蠣があり、金華さばがあり、極上寿司ネタの閖上赤貝もある。美味が揃う土地なのだ。
忘れてならないのは鯨であります。顔のような形をした宮城県の、あご付近にあるのが石巻市。捕鯨基地でもあり、そこで水揚げされた鯨肉は県内に行き渡る。僕も少年期は宮城で過ごしたので、鯨のステーキや刺身、カツなどは大好物だった。
その石巻市にある「木の屋石巻水産」は、伝統的に鯨缶詰を造り続けてきた。鯨缶は他社も造っているが、木の屋のものは原料が違う。肉が分厚くて大きいのだ(!)
10種類近くある同社の鯨缶の中でも、「長須鯨須の子大和煮」が最上等品。赤身の間にゼラチン質が網目状に入り、その柔らかさは噛むのに歯がいらないほど。口中でうっとり溶けていき、喉の奥に消えていく。
かと思えば赤身部分にさくさくとした歯触りもある。味付けも秀逸で、最初に甘さがあり、そのあとで醤油のしょっぱさが穏やかに顔を出す感じ。かつての甘辛いばかりの大和煮とはまるで違うのだ。
缶底にたっぷり入った千切り生姜もいいアクセントになっていて、鯨肉特有の臭みはほとんど感じられない。同社の鯨缶に対する熱意がひしひしと伝わってくる佳作であります。
島根のイノシシ缶詰で本格ジビエ・デビュー!
おおち山くじら/イノシシ肉のスパイス煮込み
結論から申し上げれば、このイノシシの缶詰は誠に美味。肉に臭みがないし、8種類のスパイスと6種類の香味野菜を組み合わせたスープが重層的で、素晴らしい仕上がりだ。
酸味、辛味、甘味のバランスがよく、飲み込んだあとにはピーマンの上品な苦みが余韻を残していく。一流シェフが缶修(監修)したレシピだそうな。
メインのイノシシ肉は噛み応えがあり、例えて申せば牛すじ肉の煮込みから脂部分を取り去った感じ。繊維に沿ってほろほろと崩れ、その合間に前述したスパイス&香味野菜スープが沁みこんでいる。ゆえに、肉料理にしては後味すっきり。スパイシーなミディアムボディの赤ワインが欲しくなる。
ここ10年ほどでジビエ料理もだいぶメジャーになったけれど、いざ食べようと思ってもなかなか食べられない。ジビエ料理店の数が圧倒的に少ないのだ。
一度は食べてみたいと思いつつ、月日が流れてしまったあなた。いっそのこと、この缶詰でデビューするのはどうでしょう。スープが美味しいのでバゲットを用意することをお忘れなく(バゲットをスープに浸しながら食べる)。
追記。この缶詰を食べたあとは、しばらく身体がぽかぽかしたままだった。果たしてイノシシの滋味がなせる技か? それともスパイスのせいか。