医療費が一定額を超えたら「高額療養費」

傷病手当金や休業補償給付はもともとある制度です。一定期間は休業しても給与の3分の2程度、仕事中や通勤途中に起きたものなら8割が支給されるのですから、収入はある程度カバーされ、かなり助かる制度といえます。

井戸美枝『大図解 届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)
井戸美枝『大図解 届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)

さらに医療費の自己負担が一定の額を超えると、超えた分が還付される「高額療養費」という制度もあります。

1カ月の医療費の自己負担額の上限は年齢や所得によって決まっており、一般的な所得の会社員(標準報酬月額28~50万円)の場合、約9万円です。これを超える分が、健康保険または国民健康保険から給付されるわけです。手術や入院で30万円かかったとしても、自己負担は約9万円で済みます(差額ベッド代や食事代は別途自己負担)。

高額療養費には、自己負担が一定額を超える月が1年に4回以上あると上限額が低くなる「多数回該当」や、家族で医療費負担が重い場合は家族の分を合算できる「世帯合算」などもあります。家計への医療費の負担が重くなると、より充実した給付が受けられる仕組みといえます。

「もらえるお金」を知れば保険料が節約できる

医療費の負担にも上限があり、収入も一定の水準までカバーされる、ということを考えると、病気やケガで長期療養しても、経済的なダメージは一定のレベルに収まるというわけです。

民間の医療保険に加入している人も多いですが、ある程度、貯蓄があり、医療費の自己負担分や、傷病手当金などで不足する分をカバーできれば、医療保険の必要性は低いとも考えられます。

届け出をきちんとすれば「もらえるお金」は、かなりたくさんあります。制度を知ることで、もらわずに損をすることも避けられますし、民間の保険に加入しすぎて重い保険料負担を抑えられる可能性もあります。コロナ禍の今、まずはどんな制度があるかを「しっかり知ること」が大切です。

(構成=高橋晴美)
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