国保加入者でも特例的に支給されるケース

ふつう、傷病手当金の給付が受けられるのは、会社員など健康保険に加入している人だけです。自営業やフリーランスの人が加入する国民健康保険には、傷病手当金の制度はありません。

しかし新型コロナに感染、または感染が疑われるなどで休業せざるを得なくなった場合については、国民健康保険に加入する人でも、特例的に傷病手当金が支給される可能性があります。

国民健康保険は自治体が運営主体であり、この特例的措置は、国が自治体に要請し、各市区町村が判断して行うものです。市区町村で条例を作る必要があることから、6月の議会で決まるところが多そうで、市区町村の6割程度が実施する見込みです。1日あたりの支給額や日数ともに、健康保険の給付と同様です。

対象となるのは、雇用されて働く給与所得者、つまり個人事務所など社会保険に加入していないところで働いている人や、アルバイトやパートなど、非正規雇用で働いて国民健康保険に加入している人です。フリーランス、自営業など、雇用される立場でない人には支給されません。

この特例的な措置が適用されるのは、2020年1月1日~9月30日までの間に実際に休業した場合です。適用を受けるためには、自身で市区町村の窓口に傷病手当金の申請をする必要があります。万が一、感染した場合、また感染の疑いで休業した場合は、居住する市区町村に給付の有無を確認しましょう。

仕事や通勤に原因があればより充実した給付も

傷病手当金の支給額は1日あたりの給与の3分の2に相当する額で、給与の約6割を受け取ることができます。ここで言う1日あたりの給与とは、「標準報酬月額」を30で割った額のことで、毎月受け取る給与の3分の2程度を受け取れる、と考えていいでしょう。

支給額の上限は日額3万887円です。もしも勤務先から休業中も給与が支払われた場合は、給与が傷病手当金より少ない場合のみ、差額が支給されます。傷病手当金より給与が多い場合は支給されません。給付されるのは最長1年6カ月です。

加入する健康保険組合によっては、金額や期間など、追加的な給付が受けられる場合がありますので、勤務先に確認してみましょう。

傷病手当金は病気やケガで会社を休んだ場合の制度ですが、病気やケガが仕事中や通勤途中に起きたものであった場合には、傷病手当金ではなく、「休業補償給付」が受けられます。対象となるのは、労災保険に加入(雇用されている人は原則的に皆、労災保険適用)していて、病気やケガの療養中で働くことができず、休業中、賃金が支給されない人です。

給付額は、労災保険から日給(給付基礎日額)の6割、さらに特別支給として2割が上乗せされ、合計で日給の8割です。支給期間は休業4日目からですが、連続3日休業ではなく、通算3日の休業を経て4日目の休業でも構いません。なお、業務が原因の病気、ケガの場合、3日目までについては事業主から日給の6割が支払われます(通勤が原因の場合は支給なし)。

傷病手当金が支給されるのは最長で1年6カ月ですが、休業補償給付には日数の制限がなく、働くことができない間は支給が続きます。さらに1年半経過した時点で、病気やケガの程度の労災保険が定める傷病等級1~3級に該当する場合には、より手厚い「傷病補償年金」に切り替わります。

仕事中や通勤途中に起きた病気やケガであれば、給付額、日数とも、傷病手当金より充実した給付が受けられる、というわけです。

医療機関で働く人をはじめ、介護施設、商業施設などでは、今後も新型コロナのクラスターが発生する可能性も否定できません。そうしたケースで新型コロナに感染した、あるいは感染が疑われた場合は、休業補償給付の対象となる可能性が高そうです。