5000社を超える企業を指導し、「社長の教祖」とも呼ばれた伝説のコンサルタント・一倉定氏。一倉氏は1999年に亡くなっているが、もし現在のコロナ禍に遭遇したら企業にどうアドバイスしただろうか。愛弟子の作間真司氏が一倉氏の言葉を紹介する——。
※本稿は、作間信司『一倉定の社長学』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
「有事の経営で必要なのは瞬時の決断」
新型コロナウイルス騒動の最中、もし一倉定先生がご存命ならば、緊急セミナーを開催し、資金繰りに窮する社長たちを前に、溢れ出るパワーと圧倒する口調で檄していたはずだ。
壇上でマイクを握りながら、社長たちを勇気づける怒りを顕わに、断定的な言い方を繰り返していたはずである。白髪で痩身な姿で、怒号を飛ばし、黒板を一倉理論で塗りつぶしていただろう。緊張感のない表情で講義を聞く社長には、時にはチョークが飛んでいたに違いない。
その一倉定先生が、かつてこんなことをおっしゃっていた。
「社長業には、平時の経営と有事の経営の2つがある。有事の経営にとってとても重要なことは、瞬時、瞬時の決断である。中小企業のオーナー社長であれば、長い人であれば50年。その多くは20年、30年もの間、社長を務める。会社のピンチ、好景気と長引く不況を幾度となく体験し、その折々で決断を下してきたのである」
会社が生き抜くためには、社長の決断こそ大切なのである。その一例を紹介する。