社長にとって一番大事な精神的余裕

コロナ騒動でざわめきだした3月頃のことである。ある社長から、「どうしよう」という電話がかかってきた。私は「社長のところは、現状では実質、無借金ですよね」と言うと、その社長は「そうそう。これくらい、お金、浮いているよ」と話された。

私が「すぐ借りられる?」というと、「某都市銀行と某地銀筆頭行、両方OKが出るよ」とおどけて話された。私は「社長のところの年間総額人件費って、これぐらいだよね」と言うと、「うん」と即答された。ここで大事なことは、社長が一年間の自社の総額人件費を頭に入れていることである。

そこで、私が「どのくらい借りるのですか? 10ですか?」と聞くと、その社長は「バカヤロウ、10も借りてどうする」と笑いながら答える。もう20年近くのつき合いだから互いに言いたい放題である。社長にとっては、この精神的余裕が最も大切なのである。

250万円の利子は「きわめて安い」

私は「じゃ、5だね」と言った。つまり、5億円。「利子は0.5%までいかないじゃないかな」と社長。5億の0.5%で、250万円。1年間、短期で引っ張ってきて、250万円。250万円の利子が高いか安いかは、その社長次第である。

5億円の融資を受けることで、社長が枕を高くして安眠できるコストとして考えると、250万円の利子は安いし細かいことを言えば250万円は経費になるので40%は税金が面倒を見てくれる。

社長が安心するためのコストと考えれば、きわめて安いのである。

さて、先ほどの人件費5億円だが、ざっくりとした計算は簡単である。1人、年間500万円で、社員数100人で5億円である。この会社では、手元の資金で賄えるだけのものを持っているから、銀行も貸そうと判断するわけである。二つ返事でイエスと出るわけだ。

この会社はグループ全社の財務もしっかりしていて、なおかつ比較的年商の大きな会社だった。それだけではなく、毎年の事業発展計画の発表会にお取引金融機関の幹部を招き、社長はマメに銀行の支店長に定時報告をされていて、銀行からの信用も抜群だった。最終的に金利は0.5よりもう少し下の数字で決着がついたのである。