マスメディアに登場することは一切なかった、知る人ぞ知る伝説のコンサルタントがいた。5000社を超える企業を指導し、多くの倒産寸前の企業を再建した、一倉定氏だ。真剣に激しく経営者を叱り飛ばす姿から、「社長の教祖」「炎のコンサルタント」との異名を持った。そんな一倉氏は「社長の仕事」として、なにを最重要視していたのか――。

※本稿は、作間信司『一倉定の社長学』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

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社長の仕事は「魔法の書」を作ることだ

社長にとって最も重要な仕事である「経営計画書」の作成。それを作ったら、「経営計画書」の発表会を行うべきだと一倉定いちくらさだむ先生は常におっしゃっていた。全社員がホテルで一堂に会し、今期の社長方針、経営目標を1時間30分から2時間かけて社長自身が一人で説明し、社員に協力をもとめるのだ、と。

ゲストには、自社の顧問税理士、また社労士の先生方や、何といってもお取引をいただいている金融機関の支店長、担当者、なかには本店役員・頭取までお招きし、この一年間の実行を誓うのである。

先日お伺いした大田区の会社では、39回目の経営計画発表会を9年前に社長就任されたご長男さんが取り仕切り、創業会長は弊会の感謝の言葉を述べられ、懇親会にはOB社員の方々も応援に駆けつけておられた。

これからの季節は3月決算、4月新年度の会社の発表会が土曜、日曜に集中するので北海道から九州まで出張続きの日々である。

経営計画書のことを一倉先生は「魔法の書」と呼んでおり、わが社をいい会社にするのにこれ以上の方法を知らないと言い切るほど重要視し、経営指導に入った会社では必ず作成させ発表させたのである。確かに5年、10年と続けるうちに業績も向上し、社員の意識も実力も見違えるほどに伸びている。