生き残る企業と破綻する企業は何がちがうか。『世界「倒産」図鑑』(日経BP)の筆者で、ビジネススクール講師の荒木博行氏は「山一證券の破綻は象徴的だ。“自分を許してしまうルール”を受け入れて、失敗から学ばなかった。私たちは失敗事例からもっと学ぶべきだ」という――。
バブルが招く「焦り」がリスクを増やす
日本でバブル景気とその崩壊といえば1980年代後半から1990年代初頭にかけての状況が思い浮かびます。ただし、それが最初でも最後でもなく、そして日本に限らず、大好況期とその崩壊は世界各地で何度も発生しています。
こうした大きな波が起きた時、その波の様子を冷静に見極め、しっかり掴んで成果を上げ、その後に訪れる大崩壊に巻き込まれないような対応ができれば、企業にとって千載一遇の成長のチャンスとなるわけです。しかし、現実にはなかなかうまく行かず、多くの悲劇がくり返されています。
バブルとその崩壊に関わる倒産事例をひも解いていくと、「焦り」というキーワードが浮かんできます。
たとえば、金融機関には1985年のプラザ合意以降に訪れた「金余り」現象の中、それまで「貸し出せなかった」お金を「貸し出さなければならない」状況が訪れます。そうしたゲームのルール変更にあわせて、大手都銀はこぞって都内の優良案件を押さえにかかりますが、都銀の一角を占めていた北海道拓殖銀行は、その波を掴めませんでした。