「勝ち組企業」を初日に退社したゆとりの言い分
「うちの会社は、とてもいい会社だと思います。面接官の人柄もいいし、給与も手取り月収35万。同級生から見れば勝ち組と言える企業で、ホワイト企業だったので。でも……」
今年3月に慶應義塾大学を卒業した川崎慎吾さん(仮名・22歳)は、昨年の新卒採用で見事内定を獲得した資本金数百億円の大手コンサルティング会社について、そう振り返る。しかし、一つだけ同期の50人以上のメンバーと異なる点がある。彼は今、その会社に在籍する社員ではないのだ。なんと川崎さん、入社初日にして“退社”しているのだ。しかも、会社には告げずに……。
なぜ働く前から辞めたのか。そしてなぜそれを告げないのか。話を聞くと、働くことへの意義が見いだせない若者像が浮かび上がってきた——。
都内の偏差値70の有名私立中高一貫男子校出身の川崎さん。中学時代から続けた陸上の経験からか身体は引き締まり、落ち着いた好青年といった印象を受けるが、大学3年生を迎えて取り組んだ就職活動に身は入らなかったそうだ。
ノータイ、ノージャケットで最終面接に挑む
「振り返れば就活をする覚悟も、しない覚悟もなくて中途半端でした。それがよくなかったのだと思います。就活サイトに登録したものの、エントリーシートもめんどくさくて出せなかったり、面接を無断欠席して行かなかったり……。でもなぜか1社だけ最終面接まで進んだんです。ただ、当日スーツのジャケットとネクタイが見つからなくて、遅刻して探すか、このまま行くか迷って、ネクタイもジャケットもなしで最終面接に行きました」
しかし、結果は内定。あっけなく川崎さんの就活は終わった。
「面接はたいした話はしていません。SPIテストの難易度が高かったので、地頭の良さを重視していたのではないかと思います」
晴れて内定を獲得し、内定者向けの研修が始まった。彼が内定先に違和感を覚え始めたのはこの頃からだった。
「10月から毎月課題が出されました。内容は、課題図書の要約と感想文、エクセルなどのオフィスソフトの操作、英語ニュースの翻訳。無理を強いられたものではなかったですし、ちゃんと新卒を育てるいい会社じゃんと思いました。ただ、僕は中学生のときから課題を課されるのは苦手だったんです」