発売11カ月で世界200万部、そのうち4分の1が日本で売れている(2019年12月時点)『FACTFULNESS』。同書は、私たちの世界に関する「勘違い」を「10の本能」に分類している。今回、その10の本能を現代ニュースに絡めて紹介していく。第4回は「単純化本能」だ――。(全10回)
▼単純化本能
「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み

「シンプルな解が、ほかのたくさんのことにもピタリと当てはまると思い込んでしまう」のが単純化本能だ。ロスリングは「トンカチを持つ人には、なんでもくぎに見える」ということわざを紹介している。人は身につけた知識やスキルを他のところにも使いたがる。だが、ひとつの視点だけで世界を理解することは不可能だ。たったひとつのトンカチより、さまざまな道具が入った工具箱のように多様な視点を身につけることが重要だ。

なぜ自治体の首長は天下りなのか

新型コロナウイルスが猛威を奮ったなか、安倍晋三総理の対応に多くの国民が不満を持った。そんな中、東京都知事の小池百合子氏や大阪府知事の吉村洋文氏の独断的な対応が話題を呼んだ。

さて日本の地方公共団体は「自治体」と呼べるのだろうか。なぜ多くの地方自治体が全国一律の地方税率や規制を甘んじて享受し、東京都と同条件の厳しい競争を行う道を選択しているのか。選挙が行われているのにもかかわらず、国から事実上の天下り首長を受け入れる理由は一体何なのか。

地方が「自治」を失っている理由は、その苦しい財政事情にある。

地方財政の現状は中央政府からの財政移転がなければ、そもそも全く成り立たない設計となっている。2016年度の地方自治体の決算カードによると、地方自治体は職員人件費すら自前の税収で支払うことが厳しい状況となっていることがわかる。