発売11カ月で世界200万部、そのうち4分の1が日本で売れている(2019年12月時点)『FACTFULNESS』。同書は、私たちの世界に関する「勘違い」を「10の本能」に分類している。今回、その10の本能を現代ニュースに絡めて紹介していく。第3回は「恐怖本能」だ――。(全10回)
▼恐怖本能
危険でないことを、恐ろしいと考えてしまう思い込み

「人はみな恐怖に包まれると、判断力が鈍る」、これがロスリングのいう恐怖本能だ。人は興味によって情報を取捨選択しており、ドラマチックで恐ろしいものにばかり意識を奪われる。テロによる死者よりも下痢による死者のほうがずっと多いが、人々はそれを知らず滅多に起こらないことに恐怖している。「恐怖」と「危険」は違う。その危険はどれほどのものなのか、どれくらいの頻度で起こりうるのか、「リスク」を考える必要があるのだ。

女性天皇を容認するべきかどうか

女性天皇を容認するべきかどうか、議論が交わされています。現在、女性は天皇に即位できません。なぜなら、皇室典範の第一条に「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定められているからです。

日本/手を振ってのお正月の風景お祝いのフラグ
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現在の皇室典範のもととなる明治時代の皇室典範の原案には、「男系絶ゆるときは女系を以て継承する事」の文言もありました。しかし、当時は男尊女卑的傾向が強く、伊藤博文はじめ政府高官のなかには、女性の政治的・社会的役割や婿入り婚を低く評価する意識がありました。また当時、天皇は軍隊を指揮する大元帥でもあり、軍人になれなかった女性が大元帥になるのは都合が悪かったのでしょう。こうした理由から、男系男子のみの即位が成文化されたのです。今も反対意見があるのは、日本がまだ男性優位社会で、女性を国家の象徴として仰ぐことに不安や抵抗があるからではないでしょうか。