イスラエルには、「タルピオット」というテクノロジーリーダーの養成プログラムがある。毎年成績優秀な高校生50人が選抜され、軍、大学、企業が共同で英才教育を施すものだ。このプログラムからは多くの起業家が生まれている。一体何を学ぶのか——。

※本稿は、石倉洋子、ナアマ・ルベンチック、トメル・シュスマン『タルピオット イスラエル式エリート養成プログラム』(日本経済新聞出版)の一部を再編集したものです。

はためくイスラエル国旗
写真=iStock.com/Ahmed Zaggoudi
※写真はイメージです

ミサイル迎撃システムからサイバーセキュリティまで

1973年、シリアとエジプトがイスラエルを攻撃し、ヨム・キプール(大贖罪日)戦争(第四次中東戦争)が勃発した。1948年の建国時から断続的に続いていたそれまでの戦争では、すべてイスラエルがアラブ側に勝利していたが、ヨム・キプール戦争ではアラブ側の奇襲を許し、緒戦の3日間でイスラエル国防軍は大打撃を受けた。その後の反撃で最終的に勝利したものの、不敗を誇っていたイスラエル国防軍の威信は大きく損なわれた。

これをきっかけに1979年に創設されたのが、「タルピオット」というテクノロジーリーダーの育成プログラムだ。毎年成績優秀な高校生の中から50人を選抜し、卒業後にイスラエル国防軍、ヘブライ大学、産業界が共同で「英才教育」を施す。

高い成功率を誇るミサイル迎撃システム「アイアンドーム」、弾道弾迎撃ミサイル「アロー」などは、タルピオット出身者が開発に関わったといわれている。このほかにもドローンや自動運転技術、サイバーセキュリティ技術など幅広い分野で、先進的な発明に貢献していると見られている。