何度でも失敗できる「健康的な完璧主義」をめざす

4.協力し、迅速に成果を上げるチームワーク

チームワークは、タルピオットの選考段階から重視されている。選考過程にはグループワークもある。プログラムすべてにわたり、チームワークを学ぶことに重きが置かれている。

シュスマン氏によると、タルピオットでは、①どんな分野についても速く学習できる、②迅速に判断し、プロジェクトの方向性を決めることができる、③属するチームがその決定に納得して従うリーダーシップを持つ、という力を持った人材の育成に努めているという。

②と③については、チームワークに関わる力であることは自明だが、実は①の「学び方」についてもチームワークが重要だ。

速く学ぶためには、個人での学びと、チームとしての学びを組み合わせる必要があるからだ。個人で得た学びを、グループプロジェクトで応用し、形にして実行する。自分が学んだこと、ほかのメンバーが学んだことが合わさってまた新しいアイデアが生まれることもある。個人の学びとグループでの学びを組み合わせることで、より速く、効果的に学ぶことができるのだ。

5.失敗を恐れず困難に挑戦する前向きさ

イスラエルは、日本に比べれば格段に失敗に寛容だ。それでも、高校まではおそらく、誰にも負けたことがないほど優秀だった若者が集まるタルピオットでは、「失敗に対する正しい態度を教えることは、重要な柱の一つ」(シュスマン氏)だと言う。

例えば大学の授業ではわざと、とてもこなしきれないほどのレベルや量の課題を出すことがあるという。優秀な若者ほど、完璧でない課題を提出することには抵抗を持つ。しかし、戦場では必ずしも、答えを出すのに必要な情報や時間がふんだんにあるわけではない。「特にタルピオットはトレーニングプログラムなので、完璧でなくてもいいし、失敗してもかまわない。チャレンジし、うまくいかなかった場合にその失敗からどう学べばよいかを、この期間中に学んで身につけてほしい」とシュスマン氏は語る。

「タルピオットのメンバーは、完璧主義な人が多い。しかしタルピオットでは『完璧主義』を『失敗することができる能力』も含むと定義している。完璧にできなかったからといって、思考停止に陥るのではなく、『完璧にできなかったのはなぜだろう? それを学び、次は完璧を目指そう』と、何度も挑戦できる、『健康的な完璧主義』であることが必要だ」とも話す。