「静脈を見つけるための仕組みを考えよ」
タルピオットのグループプロジェクトでは、例えば4、5人のグループに対し、「戦場で負傷者が出た場合、静脈を見つけるのが非常に困難な場合がある。静脈を見つけるための仕組みを考えよ」といった課題が与えられる。
「メンバーは現場の状況を想像し、どのような仕組みならうまくいくかを考えて、与えられた予算と期間内に解決策を完成させる。こうして、プロジェクトマネジメント、チームワーク、時間や予算の管理、クリエイティブ思考などを学んでいく」(シュスマン氏)
軍事訓練は、パラシュート部隊の落下傘降下訓練などのほか、戦車の操縦や火器の取り扱い、重装備での行軍訓練など、ほかの新人兵士と同様の訓練を受ける。さらに、陸軍、空軍、海軍など国防軍のさまざまな組織・部隊を訪れてそれぞれ数日~数週間を過ごし、現場ではどのような課題があるのか、テクノロジーがどのように活用されているかなどを肌で吸収していく。
おのずと起業家精神を学び取っていく
パーソナルトレーニングを重視しているのもタルピオットの特徴だ。
タルピオットメンバーは毎週、担当教官と面談を行う。「担当教官は質問を投げかけながら一人ひとりの強み、弱みを本人に洗い出させ、さらに目標を設定させる。それは『やるべきことを時間内に終え、徹夜しないようにしてしっかり睡眠を取る』などの、時間管理・健康管理のこともあるし、『クラスで積極的に発言する』『チームプレイヤーとしての力を強化する』といったことの場合もある」という。「目標が設定されれば、それに対して具体的にどのような対策をするかも考え、以降の面談ではその進捗を確認しながら、一人ひとりに合ったトレーニングを進めていく」(シュスマン氏)。
タルピオットでは「起業家精神」を教えるわけではない。しかし、課題を見つけて実行可能な解決策を考え出す力、組織の中でも外でもイノベーションを生む力、現場の声に耳を傾ける顧客視点、協力し、迅速に成果を上げるチームワーク、失敗を恐れず困難に挑戦する前向きさ、粘り強く任務を遂行する精神力と時間管理能力、仲間意識やネットワークなどを身につけることを重視している。そして、これらはそのまま「起業家精神」に置き換えられる。シュスマン氏は「ここで身につけた力は、私自身の起業にも、非常に役立っている」と話す。