王室は日本の大手企業並みに稼いでいる

ではこうした支出はどうやってまかなっているのだろうか。イギリス王室は収入についても公開している。2018年6月に公開された、最新の年次決算書を紐解いてみよう。

王室は様々な“ビジネス”を自前でおこなっており、2017年度の収入は3億2940万ポンド(約494億1000万円)だった。日本企業で言えば小田急電鉄や田辺三菱製薬の経常利益に匹敵する。かつてアメリカの経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、イギリス王室について「高齢の女性CEOが経営する非上場の株式会社」と表現したことがあるが、さもありなんである。

王室はこの収入をいったん国に納めたうえで、その25%を「王室助成金」という形で国から受け取っている。わかりやすく言うと、自分の稼ぎのうち4分の3が国のものとなり、残る4分の1が「手取り」となっている。2018年は7610万ポンド(約114億1500万円)の王室助成金を受け取っていた。王室助成金は自分で稼いだお金ではあるものの、国から受け取る形をとっているため「納税者のお金」と表現される。

「王室株式会社」の中核事業、それは不動産業だ。

ショッピング街や商業ビル建設、風力発電事業まで

ロンドン有数のショッピング街、リージェント・ストリート。オックスフォードサーカスとピカデリーサーカスを結ぶ長さ1キロほどのこの通りには、バーバリーやラルフローレンのような有名ブランドや、木材を使った外観が特徴的な有名デパートのリバティなどがずらりと並ぶ。日本でいうと、さしずめ東京の銀座だ。

この一帯の土地は、実はイギリス王室が所有している。テナント料は1軒あたり数千万円とも言われ、王室に莫大な利益をもたらしている。

リージェント・ストリート以外にも王室は不動産を所有している。ロンドン中心部のウェストエンドでは大規模な商業ビルを開発。また地方にも広大な土地・建物があり、ショッピングセンターや工場用地、倉庫などから賃料を得ている。

土地だけではない。王室は、イギリス沿岸の大陸棚の所有権も持っている。ここに注目した王室は、大陸棚での洋上風力発電計画を推進し、開発者である発電事業者からリース料を受け取るというビジネスモデルを展開している。イギリス沿岸の洋上風力発電は500万世帯の電力をまかなうことが可能で、すでに世界の洋上風力発電の3分の1を占めるまでに成長している。2020年にはイギリスの全電力需要の10%を供給する計画だ。

王室はこうした不動産などの管理・運営を直接は行なっておらず、クラウン・エステートという独立した法人が担当している。同法人は事業計画を立てて利益を追求しており、投資に対するリターンは12%。業界のベンチマークである8%を大きく上回る、超優良法人なのだ。