イギリス王室と日本の皇室は、どちらも高い人気があるが、その実態はまるで違う。日本テレビ前ロンドン支局長の亀甲博行氏は「王室は自前のビジネスをいくつも持っており、その収入は年間494億円にものぼる。イギリス経済にとってはまるで『金の卵を産む鶏』だ」と指摘する――。
※本稿は、亀甲博行『ヘンリー王子とメーガン妃 英国王室 家族の真実』(文春新書)の一部を再編集したものです。
バッキンガム宮殿の改修費は約553億円
イギリス王室が所有しているのは、ウィンザー城やバッキンガム宮殿だけではない。女王が毎年夏に滞在するスコットランドのバルモラル城やチャールズ皇太子夫妻が住むクラレンス・ハウス、ウィリアム王子夫妻が住むケンジントン宮殿など、様々な宮殿を所有している。
しかし不動産を持つのは維持費を支払い続けるのと同義である。たとえばマンションや一戸建てでも、10年もたてば外壁の塗り替えや屋根の補修、風呂場のリフォーム、家電製品の買い替えなど、数十万円単位でカネが吹き飛んでいく。築100年を超える大規模な宮殿なら、なおさらのことである。
イギリス王室は2016年、バッキンガム宮殿の老朽化した電気の配線や、暖房用の配管、水道管などの改修計画を発表した。宮殿だけにその規模は桁違いだ。電気の配線が延べ160キロメートル、暖房用の配管は32キロメートル、水道管も16キロメートルである。さらに、宮殿内にはいたるところに貴重な絵画などの芸術作品が飾ってあり、その数は約1万点にのぼる。改修工事のためには、こうした収蔵品を移動・保管する必要があり、専門の業者に頼まねばならない。
計上された改修費は合計で3億6900万ポンド(約553億5000万円)にのぼった。計画では、改修工事を終えるまでに10年もかかるという。