王室にかかるコストは「毎年スカイツリーが1本建つ」値段
建物だけではない。公務やロイヤルウェディングなどでロイヤルファミリーが着るドレスは、一流デザイナーが特別にデザインしたものだ。移動はロールス・ロイスやレンジローバーなどの超高級車だし、昼食会や晩餐会では豪華な料理が出される。まさに「王室は金食い虫」と言っても過言ではない。はたしていくらかかっているのだろうか。
イギリスの調査会社「ブランドファイナンス」が興味深い調査をおこなっている。同社によると、2017年の1年間に王室にかかったコストは2億9260万ポンド(約438億9000万円)だった。これは東京スカイツリーの建設費とほぼ同じである(総工費は約650億円)。毎年1本ずつスカイツリーを作り続けられる計算になる。
内訳を見てみよう。もっともコストがかかったのは、意外なことに警備である。その額は1億600万ポンド(約159億円)で全体の約4割を占めた。
エリザベス女王が私たちのロンドン支局の隣にあるIMO(国際海事機関)本部を訪れたことがある。支局を抜け出し様子を見に行くと、道路は20分ほど前から完全に封鎖され、多数の警察車両や私服・制服の警察官が道路沿いに配置されていた。女王の車列の前後も警察車両とオートバイが固めており、最高レベルの警備態勢が敷かれていた。
その分だけ費用もかさむことになる。警察官の超過勤務や休日を返上する場合の手当、増員した場合の費用など、すべて税金から支出される。
皿洗いの仕事は年収300万円で休暇もつく
女王だけではない。他の主要なロイヤルファミリーでも同様だ。たとえばヘンリー王子とメーガン妃のロイヤルウェディングでは、ヘンリー王子が元軍人、メーガン妃が黒人系、ということで警備は通常よりも強化された。結婚式にかかった3200万ポンド(約48億円)のうち、9割は警備費用だった。
警備以外の費用で目立つのは、宮殿などの修繕・維持費で2260万ポンド(約33億9000万円)だ。これに続くのが438人いる王室職員の人件費で2140万ポンド(約32億1000万円)が計上されていた。
実は王室の職員の採用は一般にも門戸が開かれている。求人広告は王室のホームページに掲載されていて、イギリス人もしくはイギリス国内で就労可能なビザがあれば、誰でも応募ができる。2018年8月にチェックしたところ、ハウスキーパーのアシスタントやチケット販売のアシスタントなど、10件の募集が出ていた。
たとえばキッチン・ポーター(皿洗いのような仕事で、食事の準備と配膳を手伝う)の場合、週5日のフルタイムで年収は2万ポンド(約300万円)となっている。食事つきで有給休暇も年に33日間ある。職場はバッキンガム宮殿だが、女王に同行して出張するケースもあるという。興味のある方は応募してみてはいかがだろうか。