皇太子はオーガニック食品を立ち上げて成功

不動産などによる収入は国庫に納める必要があるが、女王らの個人的な収入は私的な財産となる。たとえばチャールズ皇太子は、まるで起業家のように新たな事業を立ち上げている。ロンドンの高級スーパー、ウェイトローズの店内に並ぶ「ダッチー・オリジナル」という食品ブランドだ。

野菜からソーセージ、ビールに至るまで約300種類もの商品を取り揃えている。ニンジンは1キロで1.54ポンド(約230円)、牛乳は1リットルで1.02ポンド(約150円)、豚肉のソーセージは400グラムで3.79ポンド(約570円)、ビールは500ミリリットルで2.09ポンド(約310円)。ビールはゴールデンエールやIPAなど何種類かあり、私のお気に入りだ。

最初に「ダッチー・オリジナル」ブランドのビスケットを売り出したのは25年前のことだった。今ではイギリスですっかり定着している。このブランドは「オーガニック」を売りにしている。王室の持つクリーンなイメージは、「オーガニック」と親和性が高い。誰の発案かわからないが、よく考えられたビジネスだと思う。

「パラダイス文書」には女王の名前もあったが…

エリザベス女王は株への投資もおこなっている。優良株を中心に選んでおり、時価総額は約1億1000万ポンド(約165億円)と見られている。

ただし女王の投資を巡ってはこんな事実も明らかになっている。2017年、英領バミューダ諸島などタックスヘイブン(租税回避地)の法人の取引についての記録が流出した。いわゆるパラダイス文書である。

実はこのなかに、エリザベス女王の名前も登場していた。女王の個人資産からランカスター公領を通じ、約1000万ポンド(約15億円)がオフショア投資に支出されていたのだ。オフショア投資とは、金融等における税率が著しく低い国や地域に投資すること。たとえばイギリスで投資するより税金を安くできるメリットがある。

オフショア投資をすること自体は違法行為ではない。また、女王個人が投資方針に関わっていなかったということもあり、責任が問われる事態とはならなかった。とはいえ、意外なところで女王の財テクぶりが注目された一件であった。

王室はイギリスにとって「金の卵を産む鶏」

以上、数字を並べてきたが、ここで整理してみたい。

王室にかかる年間のコストは2億9260万ポンド(約438億9000万円)だ。このうち約8000万ポンドは女王や皇太子の私的な収入で賄っているが、残りは税金や王室助成金など「納税者のお金」から支出されている。

これに対し、経済効果は17億6770万ポンド(約2651億5500万円)、コストのなんと6倍である。イギリス経済全体にとってみれば、王室は金食い虫どころか、金の卵を産む鶏なのだ。

この年間コストは、イギリス国民1人あたり4.5ポンド(約675円)となる。年間675円の負担で王室を維持できているわけで、私の周りのイギリス人にも聞いてみたが、おおむね理解を得られているように感じた。