テレビや雑誌などさまざまなメディアで発信を続ける国際政治学者の三浦瑠麗氏。なかでも政治や文化について一段深い議論を展開するのがプレジデント社の公式メールマガジン「三浦瑠麗の『自分で考えるための政治の話』」(毎週水曜日配信)だ。同メールマガジンから抜粋・再編集した記事をお届けする。
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張愛玲『中国が愛を知ったころ』を読む

湖に浮かぶ小舟に乗りこんだ男女4人。流れに任せたまま漂う彼らは、月の下で詩を読み、杭州の山と湖水に囲まれて憩う。ふるさとにまだ恋も知らぬうちに婚約した妻をおいてきた男性2人は、いまどきの知識人女性2人と毎晩のようにプラトニックな交友を続ける。ただし、この美しい関係は時間を経てゴムが伸びきってしまうほどに引き伸ばされた揚げ句、いつしか中国の伝統的家族社会の中にのみ込まれていく。その恋愛の末路を描く名品──『中国が愛を知ったころ』(岩波書店、2017)。

先日、20世紀の激動の時代を生きた張愛玲という、いまでも中国に熱狂的なファンがいる作家の短編集を手に取った。きっかけは、台湾の小説、林奕含著『房思琪ファン・スーチーの初恋の楽園』(白水社、2019年)を読んだこと。台湾の有名学習塾の教師がその立場を利用して強引に性的関係を結んだ少女が、長い間愛と自尊心に苦しみ、自我を崩壊させるところまでを描く小説だ。

精神を患っていた著者の林奕含が、出版後まもなく自殺したことから、これは彼女自身の物語だったのではないかと、大騒動になった。林奕含は張愛玲文学の熱烈な愛読者であったという。苦しすぎる彼女の生き方を形成した母体としての文学を知りたくて、日本語で読める張愛玲の作品を読んでみたのだった。

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