「パラサイト 半地下の家族」(2019年)
写真=Collection Christophel
「パラサイト 半地下の家族」(2019年)

「格差」は人種を超えて共感できる社会問題

アカデミー賞の作品賞を韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が受賞した(4部門受賞)。防空壕の目的で造られた半地下の家に住む貧困層の家族。彼らは身分を偽って、丘の上の大豪邸に住む富裕層の家族にとりいる。お陰でみごと食い扶持にありつくが、運命は次第に大きく狂ってゆく。展開が予想を裏切るサスペンスだ。

この映画ははじめから欧米に浸透し、高い評価を受けて話題が先行、興行成績も絶好調だった。これまで外国語の映画が作品賞を取ったことはない。本作品がアカデミーの高い壁を乗り越えた裏には、効果的なPR活動と韓国映画が着実に築いてきた評判があった。

アカデミーはなぜ『パラサイト』に作品賞を与えたのか。それは、いま米国でもっとも政治的な課題が格差社会だからだ。人種、ジェンダー、同性愛などのLGBTQをはじめさまざまな社会問題があるなかで、格差が人々の中心的な関心になっている。その理由は端的に、将来の成長や収入増の夢を失った中産階級が分配に大きな関心を寄せるようになったから。格差は人種の違いを超えて多くの人が共有できる論点だということだ。