あれこれ口出ししていませんか?
私は東レの課長時代、社内のエレベーターで同僚に「最近、忙しい?」と尋ねられると、いつも「暇だ」と答えていました。すると、周囲の人までびっくりして私の顔を見るのがおかしかったことを覚えています。
管理職は忙しいのが当たり前、日本の会社では昔もいまも、皆そう思っています。忙しいというのはつまるところ、マネジャーなのにプレーヤーの仕事まで抱え込んでいるからにほかなりません。私は「管理職はプレイングマネジャーになるな」と提唱していますけれど、それは、自分に対しての戒めでもあります。管理職を任される人は、一プレーヤーとしても優秀だったはずです。なまじ仕事ができるものだから、未熟な部下がもたもたしていると、ついあれこれ口を出したくなり、揚げ句の果てに自分でやってしまう。自分で仕事量を増やしているのです。
部長や課長というのは本来、部下とは次元の違う付加価値の高い事案に集中すべきだし、そうでないと組織として成果を出せないからです。実際、東レでは、いつも余裕をもって働いている私の率いる部署が、どこよりも好成績を上げていました。
しかし、それには「おい、これをやっておいてくれ」だけで用が足りる部下を育てる必要があります。部下も、人によって皆、特性やレベルが違います。ここまでは任せていい、ここからは任せてはいけないと、それぞれの力に見合った仕事を適正に振ることが大切です。俺の背中を見て学べとか、仕事をやりながら覚えろではダメ。ちゃんと正しいやり方を教えるのです。