デビュー作でその年の絵本賞を総なめにするなど、国内外で高く評価されている新鋭の絵本作家ヨシタケシンスケ氏。子供だけでなく大人も魅了する作品づくりのポイントはどこにあるのか。著書『わたしのわごむはわたさない』(PHP研究所)の出版にあわせて、本人に聞いた――。
30歳で「売れないイラスト集」を出版
自分が絵本作家になるなんて想像したこともありませんでした。40歳で絵本作家としてデビューするまではイラストレーターをしていたのですが、30歳の時にはじめて出版したイラスト集はまったく売れなかった。
その時は「そりゃそうだろうな」と思いましたよ。自分が好き勝手に書き溜めていたイラストをまとめた本でしたから、読んだ人は「なんだこりゃ、よくわからん」と思って当然ですよね。ただその後、イラスト集を見た編集者の方から絵本のオファーをいただくことになった。
それをきっかけに児童書のプロにアドバイスをしてもらいながら、「どうすれば人に伝わるか」をはじめて真剣に考えて出した最初の絵本がヒットになった。僕が物事を面白がるポイントは30代の頃と何も変わっていませんが、商品としてどう見えるかを意識して伝え方を変えれば届く人にはちゃんと届くんだとわかったんです。