人間はいい加減だからこそ面白い

子供には「自分が大事にしたいから大事なんだ」という独特の価値観がありますよね。それは情報量が少ないために、ごく限られた判断基準で大事なものを選べるということでもある。

一方で大人は情報量が多いので、「有名な芸能人が褒めていた」とか「100万個売れてます!」といった情報が入ってくるたびに判断基準があっちこっち揺れ動いてしまう。すごく大事だと思っていたものなのに、あまり好きじゃない芸能人が褒めていたら急に嫌になったりとか(笑)。

僕は、そういう人間のいい加減なところこそ、本来なら面白がるポイントじゃないかと思うんです。「実は価値観ってすごくふわふわしたものだよね?」って。「大事なものは何か」と考えて答えを出したとしても、それは確固たる裏付けがあるわけではなくて、自分の気持ちひとつで価値が上がったり下がったりする。

この絵本でも、女の子の輪ゴムに対する愛情はどんどん膨らんだかと思えば、いきなり急降下したりします。それを悪いことだとは思わないし、僕だってかなり周囲に流されやすい。だからそういう人間の弱さに興味があるし、それを否定するのではなく面白がってしまうことも必要じゃないかと思うんです。

だからみんないつもなにかをさがしているんだわ。わたしは、もうみつけたけどね

僕は答えのないものしか書けない

そもそも僕は答えのないものしか書けない。勉強が嫌いだし、知識量も少ないから、「これが答えだ」なんて言い切る自信がないんです。それに、もし答えを出したとしても「もうネットでは答えが出てるよ」とか「その説はこの前、覆されたよ」と言われるかもしれない。僕がものを知らない状態でいたいのもありますが、勉強はキリがないと思っています。

となると、ものすごく当たり前のことをテーマにせざるを得ない。「お腹が空くとしょんぼりするよね」とか「好きな人に褒められたら嬉しいよね」とか「背中ってかゆいときに掻きにくいよね」とか。それなら知識は関係ない。100年前の人でも、地球の裏側にいる人でも、きっと同じことを言うはずです。

結局、僕にわかることってそれくらいなんですよ。そういう“あるあるネタ”を拾うのが楽しいし、自分にはこれしかできない。