経産省は「物言うファンド」を追い出そうとしている

実は今、経産省主導で昨年秋の臨時国会で成立した改正外為法の施行準備が進んでいる。もともと外為法では、「指定業種」の企業について、発行済み株式の「10%以上」を取得する場合に、審査付きの事前届出を義務付けていた。

それが改正法では、「1%以上」取得する場合に強化されたのだ。役員選任や事業譲渡の提案などにも厳しい制限が加えられることになった。海外の投資ファンドからは「国主導の買収防衛策だ」という批判が上がっている。

法改正の狙いは、所管の財務省の説明資料では、「経済の健全な発展につながる対内直接投資を一層促進するとともに、国の安全等を損なうおそれがある投資に適切に対応」すると書かれている。だが、“霞が関の修辞法”でいうところの「安全等」の「等」の解釈は役所次第だ。実際には法改正を主導したのは経産省で、明らかに日本企業の株式を取得し経営のあり方を揺さぶる「物言う投資ファンド」に照準を合わせたものだ。

東芝機械のTOBを主導する村上氏はシンガポールに拠点を置き、傘下にある様々なファンドを使って日本企業の株式を取得、経営にモノを言い続けている。村上氏がTOBに使ったのが海外に籍を置いたファンドならば、経営権の奪取などを経産省が阻止することが可能だったかもしれないわけだ。

伝統的大企業の経営者から泣きつかれたか

「指定業種」の対象になるのは、「国の安全」や「公の秩序」「公衆の安全」「我が国経済の円滑運営」に関わる企業だとしている。武器製造など軍需企業に留まらず、原子力や航空・宇宙、電力、通信など幅広い業種の企業が対象になるわけだ。

事前届け出を免除する制度も設けられるが、「武器製造」「原子力」「電力」「通信」は「国の安全等を損なうおそれが大きい」として免除対象からは除外され、1%ルールが適用される。

経産省の幹部は、「海外の年金基金などによる通常の投資は届け出免除になるので、影響はありません」という。だが、そのためには、次の基準を守る必要があるという。(1)外国投資家自ら又はその密接関係者が役員に就任しないこと(2)重要事業の譲渡・廃止を株主総会に自ら提案しないこと(3)国の安全等に係る非公開の技術情報にアクセスしないこと――だ。

経営に口を出したり、事業切り離しを要求しないのであれば届け出は免除する。つまり、逆にそうした要求をする「物言うファンド」の場合は、審査対象になるということだ。

経産省がこの法改正に動いた背景には、「物言うファンド」の増加に音を上げた伝統的大企業の経営者から泣きつかれたことがきっかけだと言われる。