「突然のTOB」と主張する東芝機械

東芝機械に話を戻そう。

東芝機械は1月17日にリリースを出し、TOBを申し入れられたことを自ら公表すると共に、こう指摘した。

「オフィスサポートが、本公開買い付けについて当社との間で何ら実質的な協議を行うことなくその準備を行なっており、その諸条件について当社にはほとんど情報共有がなされておらず、また、本公開買い付け実施後の当社の経営方針等についても一切の説明がない」

さらに、こう付け加えた。

「本公開買い付けの目的ないしその結果が、当社の企業価値ないし株主の皆様共同の利益の最大化を妨げるようなものであるおそれは否定できないものと認識しております」

対話もなく突然のTOBだと批判しているのだ。

これに対して村上氏は、日経ビジネスのインタビューに応じて、こう答えている。

「東芝機械株はだいぶ前から持っています。そしてずっと会社側とは対話を希望してきました。ですが全然応じてくれません。最初にアポイントが入ったときは数時間前にドタキャンされました。社長に会えたのはたったの1回だけで、その後は会ってくれません。これまで合計すると、会社側と会えたのは5回、取締役会に手紙を出した回数が13回です」

つまり、初めから東芝機械は対話の意思がなかったと指摘しているのだ。

ぬるま湯に浸かってきた日本の経営者は戦々恐々

村上氏が“狙う”企業は、社内に資金を溜め込み、事業投資を行なっていないような「キャッシュ・リッチ」のところが多い。今回の東芝機械も、前出のインタビューで「現金+売掛金+投資有価証券-買掛金で500億円程度あるはずです。これを有効活用してほしい」と述べている。

つまり、経営が「緩い」会社に狙いを定めて、株主還元や経営改善を求めているわけだ。それによって配当を増額させたり、株価の上昇を狙う「物言うファンド」としては正攻法と言っていい。だが、こうした「物言うファンド」に、これまでぬるま湯に浸かってきた日本の経営者は戦々恐々としている。

15年ほど前には日本企業の間で買収防衛策を導入する企業が相次いだ。その後、経営改革を求める正当な投資行動を阻害するとして、買収防衛策の導入には機関投資家などが反対する流れが進んだ。

日本でも生命保険会社や年金基金などが株主総会で買収防衛策の廃止などを求めるケースが増え、いったんは導入した企業でも撤廃する動きが広がっている。現経営陣を支持するか、TOBに賛成して新たな経営体制を求めるかは、株主の判断に任せるべきだというのが世の流れだ。