いまや世界中の海外旅行者の5分の1を占めるといわれ、日本のみならず世界中の観光地に押し寄せ世界中の観光地にオーバーツーリズムをもたらす「主役」とされることも多い中国人旅行者であるが、ツーリズムの世界でそれだけの存在感を示す現時点でも、パスポートを発給されているのは中国の全人口約14億のうちわずか5%ほどにすぎないという。
中国のパスポート所有者は今後年間1000万単位で増えていくともいわれており、そのポテンシャルは計り知れない。
見落とされがちな「ビザ」の問題
外国人観光客の急増は中国をはじめとするアジア中間層の成長が主要因であることはよく知られているが、日本国発行のパスポートを持つ人々がこのことについて考えるときに見落としやすいのがビザの問題である。
とくに、「日本のパスポートを持っていればどこの国でも入国できるのに」と世界の旅行者から羨まれるほど日本国のパスポート所有者は海外旅行の際にビザを必要としないことが多いため、余計にピンとこない人が多いかもしれない。
ビザとは目的ごとの入国のための事前審査証であり、つまりは入国許可である。主に国家間の政治的・経済的関係によって許可される要件やそのために必要な手続きが緩和されたり、また逆に厳格化されることもある。
世界の人々が、たとえば「さあ、次のバカンスではどこの国に行こうか」と候補となるいくつかの国を見比べるとき、自分が渡航する際に観光ビザが必要な国かどうか、その要件の厳しさ、そして手続きがどれだけ「めんどくさい」かなどは重要なチェックポイントになるのだ。
発給要件の緩和で団体客がドッと流入
そしてインバウンド市場の「主役」である中国人旅行者も、ビザ要件の緩和とともにその数を伸ばしてきた。しかし中国は日本にとってあまりに広大で巨大な国なのだ。
その人口規模や国内事情の複雑性にかんがみて、他国のようにいちどに全土・全国民に対して観光ビザ緩和や免除というわけにはいかないと判断され、中国に対するビザ緩和は地域別、要件別に段階的に行われてきた。
2000年に北京、上海、広東省の住民を対象に団体観光ビザの発給が始まり、徐々に対象地域を拡大。職業や経済力の確かさなどが発給要件とされながらも、個人観光ビザの解禁は2009年に始まり、その要件も段階的に緩和されていくこととなる。