この数年、京都を訪れる観光客が減っている。外国人観光客は増えているが、その代わりに日本人観光客が減ったからだ。社会学者の中井治郎氏は「観光公害=オーバーツーリズムが深刻化している。外国人観光客の受け入れに対して、社会的な合意の形成が不十分だったことが原因だ」という――。
※本稿は、中井治郎『パンクする京都』(星海社新書)の一部を再編集したものです。
「いうほど増えてへん」、なのに…
観光客の引き起こすさまざまな問題に京都の市民が悲鳴を上げるオーバーツーリズム的状況が大きく問題化されるようになってきたのは、2015年前後からであるといわれている。
しかし京都を訪れる観光客数が5000万人を突破した2008年以降、その数がピークを記録した2015年でも5600万人ほどなのである。しかも、その後は減少傾向にあって2018年には5275万人まで数字を下げている。
つまり観光客数は「いうほど増えてへん」うえに、近年ではむしろ減りつつあるのである。ではなぜ、京都のオーバーツーリズムは深刻化したのだろうか。
そのカラクリにおいて重要なことは「量」ではなく「質」への着目である。つまり、「どれくらいの人が京都に来ているのか?」ではなく、「どんな人が京都に来ているのか?」という視点だ。