キャッシュレスに「変える」だけでは消費は増えない

もっとも、今回のポイント還元の実施で、これまでなかなか進まなかった中小・小規模事業者のキャッシュレス化が動き出したことは間違いない。ポイント還元を行う登録店舗の対象は約200万店とみられているが、実際に登録された店舗は1カ月で約64万店を突破、12月1日現在で約86万店に達した。申請数は95万件に達しており、年内に100万店前後になるとみられている。

経産省の発表によると還元額は1日12億円に達しており、加盟店の増加に伴って還元額が膨らむ可能性が高いという。今年度予算では1日10億円の想定で1786億円を予算計上しているが、このペースが続くと400億円程度不足する見通しだという。

予算を上回る還元になっているということは、消費を増やす効果があるのではないか、と思われがちだが、必ずしもそうではない。これまで現金を使っていた人がキャッシュカードやペイペイに支払い方法を変えただけでは、消費の上乗せにはならないからだ。キャッシュレス決済に変えたことで消費額がいくらかでも増えれば消費にはプラスになるが、そうなっている保証はない。

還元終了と同時に、消費が落ち込むかもしれない

スマホなどを活用する若年層は、もともとキャッシュレス決済への抵抗は小さいが、キャッシュレスで5%還元された以上に消費を増やすとは考えにくい。もともと可処分所得が大きくなく、消費に回せる金額は限られているからだ。

貯蓄を多く持つ高齢者にどんどん消費してもらう、というのが、本来の消費増税対策だが、高齢者にとってキャッシュレス化のハードルは高いようにみえる。今現在の高齢者をキャッシュレス化に対応させるというのはなかなか難しく、キャッシュレス決済をしている人たちが高齢化する中で、徐々に高齢者のキャッシュレス化が進んでいく、ということだろう。つまり、現在75歳の人をスマホ決済に切り替えさせるのは難しいが、65歳でキャッシュレス決済を普通に使っていれば、10年後には75歳でもキャッシュレス化する、という意味である。

もっとも、若年層のキャッシュレス決済にも死角がある。2020年6月末にポイント還元の期限がやってくることだ。5%のポイント還元がなくなることで、カード利用を引き締める可能性は十分にある。もともと可処分所得が少ないので、還元で財布に戻ってくる金額が減れば、当然、その分は消費しなくなる。つまり、キャッシュレスポイント還元の終了が、消費の落ち込みにつながる可能性があるのだ。