急成長を遂げた中国IT大手テンセント。躍進はいつまで続くのか。20年の歩みをつづった最新刊『テンセント 知られざる中国デジタル革命トップランナーの全貌』(プレジデント社)の刊行にあたって、テンセントと交流のある一橋大学大学院の楠木建教授に聞いた――。

テンセントからの突然の講演依頼

わりと最近の話なのですが、テンセントグループの事業会社の経営者たちと会う機会がありました。

中国インターネットサービス大手の騰訊(テンセント)の本社=2018年10月28日、中国・深圳市(写真=時事通信フォト)

「われわれは、大きな事業会社をたくさん抱える、多角化したコングロマリットになった。グループに属する事業会社の経営者たちを連れて日本に行くので、講演とディスカッションをしてくれないか」

という内容です。つまり、テンセントが買収した企業の経営者たちを対象に、講演をしてほしいという依頼です。

私の専門は、競争戦略という分野です。これは、高度成長期にあっては相対的に意味が小さい。景気がいいときは、戦略も何も必要ない。トップライン(売り上げ)を上げてさえいけば、利益は後からついてくるからです。手の込んだ戦略ストーリーを練っているより、ガンガン攻めたほうが話が早いのです。