現場でのDNA鑑定で本人と確認
トランプ大統領は27日、米軍がシリア北西部イドリブ県で行った軍事作戦の結果、イスラム国(IS)の指導者であるアブバクル・バグダディが死亡したと発表した。
バグダディ容疑者の死亡は、これまでも何度か発表されたことから、筆者は一体何人バグダディがいるのかと思っていたが、殺害現場でDNA鑑定も行われ、バグダディ本人と確認されたということから、今回は事実だと信じたい。
トランプ大統領は、「世界はずっと安全な場所になった」と軍事作戦の意義を強調したが、心の中では来年11月の大統領選に向けていいアピールになったと満足していることだろう。また、クルド人主体のシリア民主軍(SDF)の司令官は同日、米軍との共同作戦の結果、バグダディ容疑者の側近でISのスポークスマンを務めていたアブ・ハッサン・ムハージルを殺害したと発表した。
そして先月31日、イスラム国(IS)のメディアは、バグダディ容疑者の死亡を公式に認め、アブイブラヒム・ハシミ・クラシ(Abu Ibrahim al-Hashim al-Quraishi)という人物が新たな後継者になったと明らかにした。また、ISは米国への報復を示唆し、今後ISの地域支部や支持者たちから忠誠を誓うなどの動きが出てくることだろう。
世界各地で活動を続ける系列組織
では、バグダディ後の国際テロ情勢はどうなるのか。今回の殺害を受けて、筆者は以下3つの点を指摘したい。
まず、トランプ大統領が強調するように、世界は安全な場所になったのか。結論を先に言うと、バグダディの殺害によって安全になったわけではなく、今後も同じような状況が続くことだろう。“領域支配のIS”が終わっても、バグダディが殺害されても、フィリピンやインドネシア、パキスタンやアフガニスタン、イエメンやエジプト、ナイジェリアなどでIS系組織は活動を続け、数としては減少傾向にあるものの、ISの暴力的過激思想の影響・刺激を受ける個人の脅威も依然として残っている。
また、アラビア半島のアルカイダ(AQAP)やマグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)、ソマリアのアルシャバブ(Al Shabaab)、マリを中心にサハラ地域を拠点とするイスラムとムスリムの支援団(JNIM)、シリアのフッラース・アル・ディーン(Hurras al-Deen)など、ISと対立関係にあるアルカイダ(最終的な目標は同じだが、それに至る戦略や手段で両者は争っている)系組織も各地で活動している。