モノが売れない時代にあって、意外と売れているものがある。それは薄型TVだ。AV家電の市場調査では定評のあるジーエフケー マーケティングサービス ジャパンの調べでは、液晶、プラズマ、有機ELを含めた薄型TVの市場規模は、昨年初めて1000万の大台を超えた。前年比で見ると18.5%もの伸びとなっている。
同社のアナリスト・山形雄策氏は「不況により消費者マインドが冷え込み、例年年末商戦で売れる37インチ以上が買い控えられた。とはいえ、価格下落が需要を喚起して32インチタイプを中心に伸び、市場全体の拡大につながっている」と話す。
実はここにカラクリがある。薄型テレビの主力である液晶タイプの画面1インチ当たりの単価が3000円を切ってきたのだ。2008年前半こそ北京五輪需要などで上昇していたが、景気の急激な悪化に伴い、年末商戦を迎える12月頃から大幅に下落。
この結果、年明け1月時点で32インチ画面の液晶テレビの価格は平均9万円にまで下がっている。そうしたなか「地デジへの対応もあるし、これなら買ってもいい」という値頃感が一気に高まったのだ。
いずれにしても、ここしばらくは薄型TVに対する需要は底堅く、山形氏は「09年も台数は続伸する」と見ている。しかし1インチ当たり価格は、年末には2000円台前半まで下がる可能性が高い。その価格の落ち込みを、いかに台数の伸びでカバーしていくのか、各メーカーのジレンマはこれからも続きそうだ。
(ライヴ・アート=図版作成)